『M.F先生の部屋』

 

サロンの作家先生の中では独自路線で、脚本家を目指されています。   

 

   詩 『夕暮れ』 作・マルコム.F

 

君は誰?

 

お前が悲しくて泣いてるとき 俺はいつもお前の涙を受け止めてる

 

どこにいるの?

 

ずっとお前と一緒にいた いつでも どこでも どんなときでも

 

どこにいるの?

 

今までのお前はいつも光の中にいた だから俺に会えなかった

 

どこにいるの?

 

後ろを見てみろ なにがある?

 

真っ赤な夕陽 もう夜になる

 

夜になったらまた俺は見えなくなる でも忘れるなよ 俺はいつも一緒にいる

 

見つけた 見つけた 僕の影

 

忘れるなよ お前の背中を照らす夕陽の存在

 

遊ぼうよ?

 

俺に会えるとき お前は下を向いて泣いてるよ

 

遊ぼうよ?

 

俺に会えるとき 夕陽の熱がお前の背中をさすってる

 

遊ぼうよ?

 

俺に会えるとき お前はきっと 辛くて悲しくてひとりぼっちさ

 

今度いつ会える?

 

お前が大人になったとき

 

それはいつ?

 

 

お前が 今度俺に会えたとき

 

(上記の詩は、実は以下の脚本がベースになっています)

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登場人物(下のタイトル未定の脚本の登場人物)

 

吉野明()→(十六)  陰陽師家系の高校二年生 主人公

八坂行人()→(十六) 修験道家系の高校二年生 明の親友

裁原雪(十七)     高校三年生       行人の幼馴染

 

 

 

吉野陽子(三十五)    明の母

八坂三郎(六十八)   行人の祖父

 

 

 

修験者A、B、C

 

神主

 

 

 

★脚本 タイトル 『陰陽形記記』  作・マルコム.F★

 

 

◯寺・内(秋・夕)

 

   祈祷する陰陽師集団。

   陰陽師達の掛け声に応じて人型の和紙が破裂する。

 

◯同・外(夕)

 

   橙色の折り紙で鶴を折っている吉野明(六)と鈴を転がして遊んでいる八坂行人(六)。

行人「出来た?」

明「出来た」

行人「じゃ勝負しよう。あっちゃんの鶴と僕の鈴、どっちが強いか?」

   折り鶴と鈴をくっ付ける二人。

明「なんにも起こんないね」

   明の側に来る吉野陽子(三十五)。

陽子「明、お母さん用事終わったから帰りましょう」

明「お母さん、ゆーくんのと勝負してるけどなにも起こんない」

   微笑む陽子。

陽子「悪いものじゃないと壊れたりしないわよ?二人とも良い子だからなんにも起こらないの」

行人「ふ〜ん」

明「なんだ、つまんないの。じゃ、ゆーくんバイバイ」

行人「バイバイ」

   陽子と明、手を繋ぎ歩いて行く。

 

◯同・内(夕)

 

   祈祷する陰陽師。

   人型の和紙の破裂。

 

◯吉野家・明の部屋(夏・朝)

 

   目覚まし時計を止め、起床する明(十六)。

   カーテンを開け、座禅を組み瞑想する。

   朝の身支度を済ませ、カバンに折り紙を入れ、学校へ出かける。

明「行ってきます」

陽子の声「行ってらっしゃい。妖怪に気を付けてね〜」

 

◯通学路(朝)

 

   交番で女性と警官が話しているのに気付くが通り過ぎる明。

女「盗まれたか落としたかはわからないです。切符買うときまでは間違いなくあったんですけど」

警官「紛失物の届け出があったら連絡させてもらいますね。でもあんまり期待はしない方がいいですよ」

   白々しく交番前に戻って来て、ポケットから橙色の折り鶴を出す明。

   サッと交番内へ折り鶴を投げ入れ、交番を後にする。

   破裂する折り鶴。

女「・・・?」

   交番に入って来る男。

男「あの、すみません。財布が落ちてたので届けに来たんですが」

女「それ、私の財布!ああ、有り難う御座います!」

 

◯学校・教室(昼)

 

   期末テストが返却される。

   明の受け取る答案は80〜90点代ばかり。

 

◯学校・体育館(昼)

 

   バスケの授業。

   息も絶え絶えで、下手くそプレーの明。

   隣のコートでは別クラスがバレーボールの授業。

   コートの中に行人(十六)の姿。

   活躍してみんなから喝采を受ける。

   疲労のなか、行人の姿を見つめている明。

 

◯学校・屋上(昼)

 

   一緒に弁当を食べている明と行人。

行人「お前、今年は大峰山行くの?」

明「行くよ。雪ちゃんに会いに」

行人「修行は参加すんの?」

明「いつも通り最初だけ」

行人「いいだろ、もう。そんだけ霊力あれば。お前に修行されたら俺が一生お前に追いつけないだろ。陰陽師なんだから俺らと同じ修行しなくていいだろ」

明「お前は一週間ぐらい修行やるだろ?俺は二日間だけなんだから、十分お前の方が強くなれるだろ」

行人「今年、告白すんの?雪に?」

明「する!つもりだけど・・、ヘタるかも」

   行人がポケットから鈴を取り出し鳴らす。

行人「フラれるに俺の全霊力オールイン」

   鈴の音色が変わる。

   明がポケットから橙色の折り鶴を取り出す。

   行人が持つ鈴に折り鶴をくっつける。

明「オールイン」

   鈴の音色が二回変わる。

 

◯電車(昼)

 

   走行している近鉄電車の外観。

   車内で談笑している明と行人。

   

◯バス停(昼)

 

   バスに乗り込む二人。

   

◯バス(昼)

 

   車内で談笑する二人。

   ×     ×     ×

   街から山々の風景に変化。

 

◯山村・八坂三郎宅(昼)

 

   行人の祖父の家、八坂の表札。

行人「こんちはー、じいちゃん!来たよー」

   二人を出迎えに玄関まで来る八坂三郎(六十八)。

三郎「いらっしゃい、二人とも。よう来たの!」

明「こんにちは。今年もまたよろしくお願いします」

三郎「ああ、ゆっくりしてってな。二人ともあとでお祭り行くやろ?」

行人「うん、ちょっと休憩してから行ってくるわ」

◯同・神社(夕)

 

   祭囃子の音楽。

   提灯の灯り。

   憤怒の形相の天狗像、境内の護摩壇。

   立ち並ぶ出店。

   裁原雪(十七)と合流する明と行人。

   祭りを楽しむ三人。

   カップを手にかき氷を食べながら歩く明。

 

◯同・街道(夜)

 

   神社へ向かうだんじりを眺めながら談笑する三人。

雪「ねえ聞いて。私、やっと霊力が目で見えるようになったの」

行人「おっそ」

雪「うるさい!」

   行人の肩を叩く雪。

明「でもすごいよ、雪ちゃん。俺らみたいに才能ないのに頑張ったんだね」

雪「あ〜そ〜ですか、明君までそういうこと言う?」

   不貞腐れて背を向ける雪。

 

◯山村・公園(夜)

 

   微かに聞こえる祭囃子の音楽。

   澄み渡る川の流れの音と様子。

   八時半を示す公園の時計。

行人「じゃ俺、明日早いからもう帰るわ」

雪「修験者は山入り前の神事あるもんね」

行人「朝三時。山での修行より初日の早起きが一番しんどいよ」

雪「今年はどれくらい山にいるの?」

行人「一週間ぐらい」

雪「帰ってきたら三人でまた街遊びに行こうね」

行人「明、明日七時に門の前に来いよ!」

明「うん」

   去り際、不適な笑みで明の肩を二回叩く行人。

雪「明君は一泊だけして降りてくるのよね?」

明「うん。俺は三日も四日も山登りできるような体力ないからね」

   少しの沈黙。

   拳を握り、意を決した表情の明。

明と雪「(同時に)あの・・」

雪「あ、ごめん。なに?」

明「イヤイヤ、ゴメンゴメン。なんでもない。なに?」

雪「あのさ、明君にちょっと聞きたいんだけど・・」

明「なに?」

雪「行人には・・、彼女っていたりするのかな?」

   笑みがなくなり、無表情になる明。

明「・・・。いないと思うけど・・、なんで?」

雪「いや、別にたいした意味はないの。聞いてみただけ」

   沈黙の明。

雪「そっか。いないんだね」

   微笑む雪。

   雪の表情を横目で見つめる明。

雪「ねえ、明くんはいくつの時から霊力見えてたの?」

明「覚えてない」

雪「覚えてないくらいちっちゃい頃から見えてたってことか。行人もそうなんだもんね?」

   無言で頷く明。

雪「私ね、この前初めて山の上飛んでる天狗見たの!それでね・・」

   明の無表情な顔。

   徐々に音量が上がっていく祭囃子の音楽。

   かき氷のカップのゴミが流れてくる川の様子。

 

◯大峰山・登山口(朝)

 

   結界門の文字。

   門の前に集まる修験者の集団。

   修験装束に身を包み、鈴がついた錫杖を手にする行人。

   ケータイを操作しながら雑談する大人達。

修験者A「夕方から夜にかけて雨ですね」

修験者B「宿坊に着くまでは降らないでほしいな」

   バックパックを背負った運動着姿の明が到着し、行人と合流する。

行人「おはよう。どうだった?」

明「なにが?」

行人「告白の結果」

   沈黙する明。

行人「え?振られたの?」

明「・・・。いや、言えなかった」

行人「なんだ。まあ、帰って来たらまだタイミングはいくらでもあるだろ」

   明の頭に錫杖を近づけ、鈴の音を響かせる行人。

行人「切り替えて登山を楽しもうぜ?道は知ってるよな?あんま遅れんなよ」

修験者C「では皆さん、今から出発します!」

   ぞろぞろと門をくぐり、山の中へ入っていく大人達。

   行人よりも先に前を歩いて行く明。

行人「お?やる気十分か?」

   明の後を追い、門の中へ入って行く行人。

 

◯同・山中(昼)

 

   修験者達の山登りの様子、鳴り響く鈴の音。

   祠の前で集団で経文を唱える修験者達。

   大人達に混じり経文を読む行人の姿。

   息を切らしながらその場に遅れて到着する明。

   明が到着して一息ついている間に出発する集団群。

行人「大丈夫か?」

   汗ひとつかいておらず、余裕の表情の行人。

   息切れしながら頷く明。

行人「ゆっくり登って来ればいいよ。なんかあったら前みたいに俺に紙飛行機折って飛ばせ。戻って来るから」

   声を荒げる明。

明「大丈夫だ!一人で登れる!」

行人「そうか。ちゃんと自分の体力見極めたペースで登れよ」

   早足で集団を追いかけて行く行人。

   行人の姿が見えなくなったのを確認してからつぶやく明。

明「俺の方が強いのに」

   歩き出す明。

   雲行きの怪しい空模様。

 

◯同・山頂(昼)

 

   寺の外観。

   寺の中から聞こえてくる読経の声。

 

◯同・宿坊(昼)

 

   修験者達が宿坊に入って行く。

   各々が部屋で荷解きとラフな私服に着替える。

   行人も同様の行動を取る。

   煙草を吸ったり、談笑したりリラックスして過ごす大人達。

   私服の行人が山頂入口まで歩いて行く。

 

◯同・山頂入口(夕)

 

   腰掛けて明を待つ行人。

   ときおり鈴を手の中で転がして手慰みしている。

     ×  ×  ×

   明が山頂に到着。

行人「お疲れ」

   座り込み、呼吸を整える明。

   落ち着いた明は行人を無視し、宿坊に向かおうとする。

行人「おい!」

   明の後ろ姿を見ている行人。

   雨が降り出す。

 

◯宿坊・食堂(夜)

 

   一緒に食事している明と行人。

行人「なあ、なんかあったのか?なにイラついてる?」

明「いや、別にイラついてはいないよ」

行人「お前が不機嫌なのは珍しいよ。山でなんかあったんだろ?」

   明、少し沈黙して口を開く。

明「なんもないよ。山では」

 

◯同・風呂場(夜)

 

   一緒に湯船に浸かっている明と行人。

明「雪ちゃん、お前のことが好きなんだよ」

   沈黙の間。

行人「あ〜・・・。そうか・・・、そういう・・・」

   沈黙の間。

 

◯同・部屋(夜)

 

   机で折り紙で鶴を折っている明。

   布団に入って天井を見つめている行人。

行人「なあ?もし、もしだよ?もし俺が・・、俺も雪のことが好きだって言ったら・・、お前は・・その・・」

   沈黙の間。

   行人の方へ笑顔で振り向く明。

明「まあ、普通に考えたらそうなるよな。お前が京都(こっち)に引っ越して来る前、ここで小さい頃からの幼馴染で・・。あんなに仲良いんだし・・。そうなるのが普通っていうか自然っていうか

行人「返事してもいいか?俺」

明「俺の許可なんか取る必要ないだろ?お前の自由だ」

   立ち上がる明。

   机の上には明が持ってきた小説本、折り紙の束、白い折り紙の上に橙色の折り鶴、その横に倒れている黒い折り鶴。

明「もう寝よう、電気消すぞ」

行人「ああ」

   消灯し、寝床につく二人。

   響く雨音。

 

◯大峰山・山頂入口(朝)

 

   集まる修験者達と明と行人。

行人「明、俺が戻るまでじいちゃん家でゆっくりしてろよ。雪とは・・まあ、遊びづらいかも知れないけど」

   考え込む明。

   出発する集団。

行人「じゃあな」

   歩き出す行人。

   行人を追いかける明。

行人「どした?下山ルートはあっちだぞ」

明「お前が下山するときまで俺も一緒に修行する」

行人「はあ?」

   行人の前に出る明。

行人「明!やめとけって!」

明「大丈夫だ」

行人「お前の体力じゃ無理だって!今日からのルートはだいぶハードなんだぞ!一般登山用のルートでゼイゼイハアハアいってるお前に行ける道じゃないから!悪いこと言わないからやめとけって!」

   黙々と歩く明。

   明の肩を掴み引き止める行人。

行人「お前みたいなモヤシにこっから先はダメだ!帰れ!」

明「俺も真剣に修行する。だから続ける!」

   行人の手を振り払って進む明。

行人「知らないからな、どうなっても」

 

◯同・山中(昼)

 

   息を切らしながら一人で山道を歩いている明。

   鳴り響く修験者達の鈴の音。

   明の前方、遠目に見える集団の最後尾。

   最後尾にいる行人、時折後方を確認する仕草をする。

     ×  ×  ×

   雨でぬかるんでいる道を一人きりで歩いている明。

   石の上に腰掛けて休憩する。

   

◯山村・公園(夜・明の回想)

 

   微笑む雪の表情。

 

※回想終わり

 

◯大峰山・山中(昼)

 

   うつむいて石の上に腰掛けている明。

明「クソッ!」

   立ち上がり、かなり速めのペースで歩き出す。

     ×  ×  ×

   ぬかるみで足を滑らす。

   山道から転がり落ちる明。

   頭を怪我し出血、うめき声を上げ、足を痛めて歩くことができない。

     ×  ×  ×

   バックからケータイを取り出し画面を見る明。

   電波圏外の表示。

   上体を起こし木を背にもたれかかる。

   バックから小説本と折り紙とペンを取り出す。

   小説本を下敷きに青色の折り紙に、『踏み外して落ちた助けてくれ』

   とメッセージを書く明。

   一瞬考えてから、『ごめん』の言葉を書き加える。

   その折り紙で紙飛行機を折る。

   完成した紙飛行機を手の平に乗せ、呪文を呟く明。

明「八坂行人のもとへ」

   紙飛行機を飛ばす明。

   物理に逆らって上空へとゆっくり飛び立っていく紙飛行機。

     ×  ×  ×

   緑色の折り紙を取り出し、『雪ちゃんへ君のことが好きです付き合って下さい』とメッセージを書く明。

   その折り紙で紙飛行機を折り、呪文を呟く。

明「裁原雪の・・」

   ためらいの間。

明「神社の護摩壇へ飛んでけ」

   紙飛行機を飛ばす明。

   村の方角へとゆっくり飛び立って行く紙飛行機。

   目を閉じて眠る明。

 

◯山村・神社(秋・昼)

 

   コオロギの虫の音。

   強い風が吹き、紅葉の木々の葉を激しく揺らす。

   神社境内の掃き掃除をしてる明。

   頭に傷の痕。

   境内に雪がやって来る。

雪「明君」

明「雪ちゃん」

雪「神社にいるって聞いて。来てたんだ、連絡ちょうだいよ」

明「いやまあ、遊びに来てるわけじゃないからね。色んな人に迷惑かけた贖罪をしに来させてもらってるから」

雪「みんな無事だった、もうそんなに気に病むまないで」

明「うん、ありがとう」

   微笑む明。

明「昨日はアイツとデートだったんでしょ?」

雪「映画見て、街ブラついてただけだよ。楽しかったけどね」

明「そっか」

雪「明君が来てるって聞いたから、これ渡そうと思って」

   ポケットから鈴を取り出す雪。

雪「これ私が行人からもらった鈴なんだけど、私も自分の霊力込めたから、一個明君にお守りにと思って。いや、明君には全く必要ない物っていうのは解ってるよ?ただその・・、仲直りしてもらうきっかけになればって思って・・その・・」

   悲しそうな表情の雪。

雪「来年も・・、また三人で仲良く遊びたいし」

   明、手を差し出しながら、

明「もらうよ」

   少し驚いた表情の雪、その後笑顔になり、明に鈴を手渡す。

   強い風が吹く。

雪「じゃあもう私は帰るね、仕事の邪魔してごめんね」

明「ううん、ありがとう。またね」

雪「うん、またね」

   境内から去る雪。

   掃除の続きをする明。

   神社階段を下ったところで立ち止まり、振り返る雪。

 

◯裁原家・玄関(昼)

 

   帰宅する雪。

 

◯同・雪の部屋(昼)

 

   上着を脱いで、ベッドに寝転がる雪。

   雪の勉強机とデスクマットの間には、折目でクシャクシャの四つ折りされている緑色の折り紙が挟まれている。

 

◯山村・神社(昼)

 

   社務所で休憩している明。

   机には満タンのブラックコーヒー、鈴がある。

   手の平の上で赤色の折り鶴を浮かせて遊んでいる明。

   神主が扉を開けて、

神主「吉野君、休憩終わってからでいいから、あっちの方突風で落ち葉がすごいから後で頼みたいんだよ」

明「わかりました、大丈夫ですよ。すぐ行きます」

   折り鶴を机に落とし、扉を開けたまま社務所から出ていく明。

   部屋の中に吹き込む強風。

   鈴が机を転がり、折り鶴に接触する。

   憤怒の形相の天狗像、破裂音。

 

                                了