みなしゃーん?っていったい何人の人がこれを見ているのか、いやいやそんなことには実はお構いもなくあたいがUPちているのは当たり前。

🔴今日2023

年5/4に発見してちまった!2020年にあたいが、『花考』的な、エッセイを記していた事実に。いつあの世へ召されるかもわからにゃいお爺さんは、これを投稿する不幸をお許しあれ?ほええっ、こんなん出てましたあ。このところの『花』関わりにふと発見っ。

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仮タイトル『ゆりー礼賛』

 

 2020年 6月5日の午後のことである。

新型コロにゃんウイルスが世界を席巻して久しく、

5月末には、東京及び首都圏、北海道を残し、警戒解除 なんぞと聞いてマジかよって

思った矢先

東京アラートって何? 意味は警報?にゃにそれ くねくね、ぺろぺろ

かっかっかっかっ ウチの猫になってしまう私がいた。

その日、2020年6月5日、夏日で、 暑い。

二年ほど前から脚を少しく悪くした私は 移動はチャリか車です。その日は車で久々声の仕事に向かう。

その頃、外画吹き替え、(海外のテレビドラマの吹き替え)のスタジオは、普段15~20人はたむろする空間に

1人か、多くても3人。その3人とは、その回のドラマ内で比較的濃く絡む者同士だったりした。三密を避けた結果のコマ切れ収録方法。

1人での収録だった先週は、ミキサーさんとディレクターさん以外に会うことはなかった。

しかしその翌週のその日 収録は、やはり台詞が噛み合わなかったのか、3人で行われた。

スタッフは大変なご苦労だと思う。

まだまだ日差しの強い 午後三時 のこと。

音声収録ほんの数十分で修了、申し訳ないような労働時間で

早くも帰宅して間もない、私の家のドアホンが 鳴った。

モニター越しの顔は、道を挟んだ斜向かいの年配のご婦人。何事かと思うと

『こないだは、お金をいただいてしまってすみませんでした。ウチの鉢に百合が咲いたので差し上げたいのですが如何ですか?』

『え?それは有り難うございます。ご迷惑をおかけしたのに逆に恐縮です』

 

その日の午後、私のウチに白い百合が、シュッとした、三つは花開き、二つはつぼみの

彼女?彼女たち?がやって来た。

  

なにゆえ『ゆりー』が、(その百合さんたちひと株を、いつしか私は そう名付けていた。つまるところ、彼女、は単体、だと思う。その後数日しげしげ観察して結論づけた。おお、なんと麗しく。ゆりー ううむむ)

どんな経緯でゆりーはウチへ来たのか,話しは数ヶ月前にさかのぼる。もう十歳にもなる僕のボロ愛車?チンケチェントを、右にハンドルを切り、バックで駐車中、歩行者と遭遇。こう云う時は本人は冷静なつもりでも何かが変なものである。わたしは、斜向かいの家の、白いレクサスの鼻の先の、道路に面した、その隣家との境目に置かれていた小さな植木鉢を、タイヤで引っかけてしまったらしく、ポコッと破損する音を耳にした。あーあ、と、駐車後、そのお宅のインターホンを押すと、私ぐらいの年齢のご主人が現れた。

事情を話し、『弁償します、いくらぐらいですかねえ?』と質問すると、

母のものなのでわかりませんが、 私

が『2000円ぐらいですかね?』 

いやそんなにしないでしょおお気になさらず。 

『いえいえそういうわけには。じゃあ1000円ではいかがでしょう?』 

では真ん中とって、500円 にしません? 

てなわけで、一件落着。

鉢には何か小さな花が植わっていたはずだが、私たちにはその価値も値段もさっぱりわからないまま 忘れた。

そして、かの6月5日のゆりー来訪、に至る。

花を育てていらっしゃるあちらのお母様が、僕の車での帰宅を見てか、玄関先の大きな鉢に咲いた百合のひと株を切って、私に下さったのだ。

花をもらうことは、そりゃあ62年近くも生きていれば幾度もある。

しかし、記憶に残っている花、というのは、私の場合、1本、なやつ、なのかもしれない。その昔、もう30年ちかくも昔のこと、渋谷は幡ヶ谷の方で、飲食店をやっていたカミサンが、お客さんから、どういう経緯かは忘れたが、白いシャクヤクを一輪もらったことがある。大きく立派で、そのフォルムやらは忘れてしまったが、

立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花、と云うが、なるほどこれがシャクヤクというやつかあ、と、じっくり見入ったことを覚えている花ちうものが、『もの凄い』つうことを認識した。

ああああ、僕だけだろうか?花を、複数の花を目にすると、困ってしまう。どれも美しいよ?と、お世辞を云いたくなる。いやべつに、花さんたちが競い、私が一番よ!と気張っているように見える訳ではない。だが、その美しさのあまりの儚さに、たじろいでしまうのだ。

花弁のかすかな傷、それぞれの咲いた時間。茎の長さで見えない花やら、それより何より、

目線が迷う。美とはなんなのかと思う。花を集めりゃいいのか?って。かつて大英帝国の探検家といわれる人達が、遺跡をざっくり刳り抜いて持ってきちゃったり、に、近いと思う。

花束なんか作んなよ。気持ち悪いんだよ。そういうのは造花でやってくれよ、ってどこかで思う。

その点、一輪というのは比較するものがない以上、絶対的存在であるし圧倒的に花が花として認識され、わかりやすい。鑑賞できる、恐ろしいぐらいに、生々しい。一輪の花と相対するのは まるでSEXすること にひょっとして近い? だから好きなの かもしれない。

しかし、ウチには魔物が二匹居る。2才とすこしの猫兄弟である。彼らは、先代のキジトラ二兄弟とは違い、身体もでかく、狩人な眼をしたワイルドな連中だ。家電関係のコード類はむき出しにしておくと殆ど食い千切られる。百合の花など眼を離した隙にバラバラかもしれない。私は彼女を、まずは風呂の小さな窓に置いた。天然水をいれた小さな酒瓶に差して。その酒瓶たるや、実はその前日厄除け祈祷に行ってきた神社の御神酒の瓶である。

ラインで娘やカミサンに知らせると、猫に百合は毒、らしい。つまりは、互いをなるべく同居させぬやうにせねばならぬ。花の命は短くて、という。夜は、猫さんも出入り基本禁止の私の寝室兼仕事場の一階の部屋にゆりーは眠る?ことになった。命の短い花ちうもの。せっかくいらした客人を じっくり見やうと思った。

百合の花1本。ひと株、という認識でいいのだらうか?50センチはあろうかという幹?から、噴水のように先のとがった葉が幾重にも湧き出た先端に5つに首が、ってか5本の手指のように天に向けて 伸びた指先からくの字に折れて 白いアールヌーボーのラッパのように、ってアールヌーボーは自然を真似たのにいやどっちでもいいじゃないか、アールヌーボーな指先、指先だから1本1本長さが違う。天に向かってそびえるその指達の手のひらは、その中央にぐっさり天からのくさびを穿たれ痛がるかのようにくしゃっとすぼまり、しかし指達はしっかと意志を持ってまっすぐに天に伸びる。そのすぼまって天をめざす指達の先から、花火のように5方向にひらくラッパ。いやラッパは三本、2つはサナギなフォルムの蕾み。この爆発するようなラッパ状のもの。

そうだ、1920年代の無声映画。フリッツ・ラングのメトロポリスに登場した、未来都市の地下深くにある、都市を動かす装置、原子力発電所のやうな地下工場の、12時間勤務の労働者たちの勤務交代のサイレンのフォルム、あれは 百合のようだった。

視覚的人間、眼に見たもので芸術するフリッツ・ラングは、その百合のフォルムのラッパから白く煙る音を噴射させた。あれはたぶん蒸気?天才のすることは実に端的だ。手塚治虫もオマージュをきっと捧げたあのサイレン、君かあ、君だったんだね白百合くん!斜向かいのおばはんは、百合としか云わなんだ。なに百合か知らぬが私は

生涯で二度目、私は、花というものが、もの凄いっつうことを、観察することになる。

天に向けて伸びた指先からくの字に折れて噴射する花。サイレンのフォルムに似ている、

でなければ、そのフォルムは、蓄音機の、ビクター犬が耳をそばだてるあの蓄音機のラッパだ。それにしても何という長さだ!!指の如く枝分かれした茎からくの字に折れた花の首から花びらの先への長さと云ったら。中を見る。雄しべと雌しべのあのあの長さはどうだ!!!何故にしてこんなにも深いのか?ブラックホールの解説モデルだこれは。

!ジョージア・オキーフという絵描きが官能的な花を多く描いたが、あれがいかに花の本質を捉えていたかがよくわかる。

もの凄いむき出しだ。まなにしろ性器っちゃあ性器だ。

風呂に入りつつ眺めた。なまめかしい。ある意味気持ち悪くもある。何かの化身のようだ。

そもそも彼女は何人なのか、はじめは5人と思いかけたがすぐさまひとりだと納得した。だって手のひらから5方向に爆発しているのだ。ゲイジュツは爆発だ、と岡本太郎が云ったが、こういう生き物をみると凄く納得できる。顔が5つあったっていいじゃないか!5人でひとり、キングギドラか八股のおろち、ゆりー♪

だからひとつの花が枯れようが彼女はそこに居る。そう、花をよく知らぬ私は、驚いたのものだ。折れた花びらが、根性で快復すること。そしてそしてそして!何より、枯れていく花の美しさよ!!なんということだ!いったい生き物の一生と云うものは、咲き誇っている

一瞬のことか?そうではないことを百合さんに教えられている。

枯れていくということの美しさ。めまいがする。私はとくに花を好きというわけではない。その

華奢さや、扱いにくさ、猫たちも居ることだし、ウチに花はまず居ることがない。

だがそれだけに、花が来ると、守らねばならぬし、こうしてじっくりと一緒に過ごすことになる。一緒に過ごせる者は我が家に私しかいないのだ。

膝を悪くして以来一階の暗い部屋に居を移した私。その部屋だけが、猫さん基本出入り禁止にゃのだ。

 もちろん、果敢で、好奇心旺盛なこづちというムキムキお兄ちゃん猫の方は、しばしば力ずくで忍び込んでくる。捕まえてぎゅっと抱きしめるとゴロゴロくねくねする実に気のいい奴である。

ゆりーが、枯れる感じが何故こんなに美しいのか? 4日間付き合った夜にようやく気がついた。『動き』なのだ! 変化なのだ! 花は開きつつあるときも、開ききってからも、しおれていく時も、その全てが花なのだ。一輪の花の内部には水ちう血液が流れ、呼吸し、動いている。細胞が伸び縮みするのだ。すこしづつ枯れてゆくのだ、死んでいく過程が生なのだ。死と隣り合わせなのだ。

生は、死だ。花はそれを体現している。もの凄い生き物だ。興奮する。涙が出る。

動きなのだ。現在進行形なのだ。美とはそれなのだ。その瞬間とは、実は無いのかもしれない。生から死へ、その移行こそが美なのだ。6月9日朝、水を替えるため、また日光にあてるため移動中に、

花が落ちた。それも、根元から、崩折れ、落ちた。花、ラッパの重みで。そう、ポトリとラッパが抜け落ちた。その後は、残った三つの花が咲きあとを引き継ぎ、雌しべと雄しべごと落ちた後には

まるで亀頭の取れて、それでも勃起し続けるペニスのやうな、筒が残っている。なんだか逞しい。このまま、ウチの猫の額より狭い その一辺が異常に長い三角定規のような庭もどきに、挿し木してみようか?ゆり-なら、あのちんぽから種をのこすのではないか?と妄想している。

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『ビリケン夜話・NET版』 ◆文章な夜話◆ パート①

  『そいつあ~・・・オスだよ?』        2015 秋 アップ

 

 北山くん(仮名)は 面白い男だ。

毎年訪ねて来てくれる。

秋になると 都内は東の方から 誕生プレゼントを携えてやってくる。

 

ある年には、『真剣師 小池重明 』の伝記マンガ。知る人ぞ知る昭和のアウトロー 賭け将棋差しの小池重明である。

「見つけましたあ!」と云って持って来てくれた。

残念ながら一巻のみで続きが出なかったシリーズなのだと云う。

主人公のむちゃくちゃな人生は、佳境に入るずうっと前で廃刊・・。

そういうのもっ シリーズって云うのだらうか…?

 

(小池重明は団鬼六が書いている。映画化もとん挫している。六平直政主演予定だったらしい。ミスキャストだと思う。その昔『おどろき桃の木20世紀』という濃い番組で紹介され、その時の再現フィルムの役者さんが素晴らしかった。知り合いである。松陰神社ですれ違った時、小池さん!とサインを求めたくなった。本当はリアルな重明は、グッチ裕三にそっくりである)

 

この物語の主人公 北山くんの次なる置き土産はというと  

全く僕の知るところではない 『YOSHIHIKO』というタイトルの謎のプロレスムービー?を置いて行かれたことがある。

観なければならない。

女の子みたいな顔の 空気人形のプロレスラー・ヨシヒコが、

本物の人間のレスラー達とバトルするようだ。

観てみるに ある意味大作だった。

 ヨシヒコには大きなオッパイがある。

…はっきり書こう。ヨシヒコとは要するに往年のダッチワイフ。

南極一号の類いの人形だ。

時にヨシヒコは髭をたくわえ 宝塚の男装の麗人のように宙を舞い、

マッチョな悪役レスラー達を翻弄した。

しかし時に 身体がぺしゃんこになるほどの、全身「肺気胸」を発症!

リング上であっけなく昇天したヨシヒコは、おごそかに巻きとられ 

ウエストポーチに埋葬され 退場した。

しかし次の試合では 胸にガムテープのバッテンを張って不死鳥のように甦る。

ヨシヒコは物凄くセクシーだ。

あの筋肉の森の中で、 

あたかも、70年代の唄うゴム人間、堕落な香りの スタア、沢田研二であり、昭和30代のメケメケでヨイトマケな丸山明宏≒美輪さんも髣髴とさせた。(正確にはヨイトマケは40年代?)

超然と、 禁忌な存在、ヨシヒコ。 妖しかった・・・・・・。

ガンダム¿?モビルスーツ?を装着して現れたこともある。

 

僕は超笑って2時間ほどのその作品の、半ばくらいまでは観たのだが

その先を 実はまだ観ていない。

いや、面白いのだが あと1時間も続くのかよっ と…箸を置いたままである。

北山くんには内緒だ。

 

(あ!『YOSHIHIKO』のDVD探さねば!

今年始めた「終活」の大掃除で・・・・ひょっとして?!

いやいやっ どこかに必ずある筈だ…が ・・・・・・汗)

 

僕の方は と云えば、そんな彼に

1960年代のアメリカTVシリーズ『逃亡者』のDVD

15巻入りの 超かさばる重い箱を持たせたりする。

 

≪嗚呼・・・オープニングNA:        

 

「リチャード・キンブル 職業・医師。

正しかるべき正義も、時として盲いることがある。             彼は 身に覚えのない妻殺しの罪で死刑を宣告され、         護送の途中 列車事故にあって辛くも脱走した。           孤独と絶望の逃亡生活が始まる.                  髪の色を変え、                          重労働に耐えながら                        犯行現場から走り去った片腕の男を探し求める。           彼は逃げる!                           執拗なジェラード警部の追跡をかわしながら。            現在を                              今夜を                               そして 明日を生きるために・・・」 ←往年の名声優・名ナレーター 矢島正明氏のナレーションではじまるアメリカン・ドラマの良心、核だ。昭和のシナリオ・ライターや監督たちのバイブル!山田太一が、長谷川和彦が、耳をダンボにしてその番組から脚本の神髄を学んだ、らしい≫

 

一年後…北山くんは僕への土産と、

ああ律儀にも ほとんど観られなかったに違いない重たい『逃亡者』15巻を提げて はるばるやって来た。

番組内容についてのコメントは敢えて求めず、

その年の僕は さすがに『シーズン2』を持たせるという暴挙に出ることを なんとか思いとどまった・・・・・・。

 

今年も 彼がやってきた。

 

北山君は 37歳。つぶらな瞳で ちょい天然パーマ。なかなかの巨漢である。

彼には細君がいる。お会いしたことはないが ちいちゃくて細身で

おかっぱ頭の大きな目をした美人だと 僕は勝手に想像している。

何やらアート系の仕事をなさっておられるらしい。

 

その日 散歩から帰った僕は ゴマ塩頭にハンチングを被ったまま

眼ヤニ勝ちな瞼を指でくちゅくちゅ擦り

脂ギッシュな眼鏡のレンズをティッシュで拭き拭きしながら

「いらっしゃいっ」 と 彼を迎えた・・・・・・・・・・・・。

 

≪このところ ハンチング帽を被ったまま仕事をするようになった初老の 私と云う声優。

(いや、本来は こういうのをよしとする性格ではない。わたしは 昔から思う。なぜ室内で帽子を被ったままの声優が 少数とはいえ存在するのだ?

「なんだアイツら? 禿げてんだろっ! マナーがなってない! それでも大人かよっ。ダッさっ!!!」 と 内心せせら笑っていたのだが…) 

この一年以上 な~んだか鬱気分の私は、

今年の春から試しに・・・帽子を被ってみた。さうしてみると・・・

いやっ! 他人への無礼感は否めないながら、こりゃいいっ!

髪を手櫛で整えなくても済むし オウチまで被ったままでも別にええんでないの?ナぁ~イスでないのっ?年を取るとおばさん化するのか?わからん。が 別にいいではないかあ帽子被ってたって と思うようになった。 

「白髪化」のめんどくさいところは、(僕の場合だが)

ただでさえの癖ッ毛が、白髪になると、その中に不遜な株がちょいちょい混じることだ。一本だけ無秩序に伸びやがって、自己主張が強い。 どう見てもあれは『白い』陰毛だ。 (嗚呼っ白い一本を陰毛の森の中に発見した日の戸惑いよ!) あらぬ方向に くねくねカクカク蛇花火みたいに元気に伸びやがって!モダンな「生け花」の枝か蔓みたくはみ出しやがって!人知れず いや「本人知れず」ぴろろ~~~ん と頭皮や『もみあげ』辺りから屹立しているのを発見すると、実にめんどくさい気分になる。だが抜くのは断じて潔くない気がしてならん。やはり共存すべきだろお。

帽子を被れば!後ろはともかく 「もみあげの陰毛」はそっと帽子内

に隠せる。そして何より 何よりも 「ぼくは、僕はね? ほんとうはね? ここに居るけど 居ないんだよ?」的な 

ちょっとだけ 近よんなよ?おめえらっ的な、 

ある意味 昭和の特高警察的不遜さを、よしとしてしまえば、

室内帽子というのは ちょっちサングラスな『安心感』があるっ。

だから帽子「麻の黒いハンチング」は今のところ 僕の身体の一部化して来た「きらい」がある。

あ、以前は帽子と云えば(「メトロ帽」とか「ベルハット」?と云うらしい・・僕お気に入りのフォルム)もっと本格的に昭和20年代なやつを 横溝正史的な帽子を 好んで僕は被っていた。

が ある日カミさんが云った。

『オイリー君(←ほんとうにさう呼ばれている、四半世紀以上前から。)

最近お爺さんになったねえ。その帽子さあ「世田谷散歩」な好々爺に見えるよ?』 

自分に似合う他の形をあちこち探してみた。・・『隠す感』『主張感』が、 「ツバが長すぎるキャップ」やらその他の帽子に比べて 実に控えめなのが「ハンチング」な気がしてきた。世間知らずっぽく謙虚でブルージー。『とりあえず無難』なのが、今のところ僕の中では『ハンチング』な気がしてきた。のっぺりとした顔に合うそれはなかなか見つからなかったのだが、

たまたま下北沢で見つけたヤツ 色が抜けたら染料で染めることまでしている

ということはどうやら 愛でているということのようである。 

僕とハンチング帽の一体化は 少しづつ侵攻している。

でも 帽子を脱ぐ度 ヅラを外したような、なにか裸になったような恥ずかしさを感じる。また、帽子による温室効果で頭頂部辺りからの砂漠化の懸念もよぎり 内心微苦笑するオジジなわたしがいる・・・・≫

 

・・・・・・・「いらっしゃいっ」と 彼を迎えた。

 

北山くんはいつもどこやらのお洒落なハーブティやら不思議な高級茶葉の詰め合わせをカミさんに渡している。(きっと奥方の趣味に違いない。ワシは実は茶なら断然「知覧茶」とかがいいのだがなあ・・)

 

「いただきました」とカミさん。

「いつもありがとう」と 僕。

 

「先生っ」

と 北山くんが僕に声をかける。

 

≪何故彼が僕を『先生』と呼ぶかというと、彼が『声優志望の人が行く学校の元生徒さん』だからである。

僕はそこでけっこうな長きに渡って講師の仕事をさせていただいている。

どこぞインチキな香りは否めないが、僕なりに熱い気持ちで生徒さんの想像性を刺激しようといつも『あがいている』。(そういう学校は、そうでなければと思っている。常に手探りだ。手法を確立してしまった先生は特に若者には毒だと 何故か僕は思う。これは確信だ≫

 

「先生っ生まれました!」

 

「結婚10年だっけ?よかったねえ」

 

「今5か月です」

と 

スマホの動画を見せられた。

小さくて可愛い女の子だ。

彼 に 似なくてよかった。

 

「ほおおおおおおお!」

 

「早産で2300gでしたが おかげさまで元気です。」

 

「いやいやっ、よっかったよかった!」

 

「先生っ!!」

 

と彼は つぶらな瞳を輝かせ なんともムーミンな顔で繰り返す。

 

「実は面白いことがあったんですよ。」

「何?」

「たぶん先生が面白がるんじゃないかと」

「何何?」

 

つぶらなムーミンの瞳を さらに輝かせると

彼の パッショネイトな『民話体験談』が 始まった・・・・・。

 

「やっぱり『分かる』もんですよね あの時だっ て 」

 

「はいはい はいはい、女のひとって 分るって云うよね 

あの時 出来たに違いないって」

 

「いえっ・・・・・・・・ 自分なんです」

 

「はっ?」

僕の心の食指が動いた。

 

「そのお…  あ、出来たな? って あの時だっ!て 

去年の8月の末近く 僕に 来た んですよ。」

「うん んで?」

 

「で、ですね? 僕 それから体調が一気におかしくなったんです。」

「ほおっ」

 

「立てない。歩けない。目まいがする。3~4日は会社休みました。」

 

「そいつは重篤だ!」

 

「ゲロも吐きました」

 

「うぷっ!てやつ?」

 

「はい」

 

「ププッ()『つわり』やん」

 

「そお~なんですよ、後で思えばねっ?

女房に

『あなた「糖尿」なんじゃないの?』と云われ

掛かりつけの医者に行ったら 

『その通おおおおりっ!』 て診断されました。

 

でも、そうこうするうち症状は 

 

すうっと消えちゃったんですよね?

身体の異常が すっかり消え失せたんです

自分の誕生日になる頃には。」

 

「え?北山くんの誕生日っていつだっけ?」

「九月五日です」

「なんだ 僕と同じ 乙女座くん やあん」

 

≪そんならそうと早く云えよ。僕も チミが来る頃誕生日プレゼント用意したかも。まいっか≫

 

 彼の眼孔の黒闇の面積が一気に増し  そして云った。

 

「するとですね?女房が『あれ?今月遅いなあ』って

 産婦人科行ったんすよ。

 そしたら・・・

 間違いありません、おめでとうございますって。 」

 

「なんだかんだ長かったよなあ。

 待望の赤ちゃんだもんなあ!        

 あきらめかけたり しなかったの?」

 

「はい、まあ そろそろ最後のチャンスかなって」

 

「よかったよなああ~。

 あのさ それまで奥さんの方には 

   『つわり』とか 何か前兆なかったの?」

 

「それが まるっっっきり無かったんですよ」

 

「なあああ~~~~~~~~るうううう、

    ふうううううんんんんんんんんんん、 

よく云うよね?

赤ちゃんって生まれてくる前に

両親になるカップルを上から見てて

それからお母さんのお腹に宿るって」

 

「そういう話 ありますよね」

 

「とおちゃん と かあちゃん 間違えちゃったかあ。」

 

「どうも そうみたいなんです。  

糖尿って近所の医者で云われたんで

慌てて大きな病院で精密検査したら、

まったくの健康体だって云われました。

もう近所の医者行くのやめました」

 

彼は続けた。

「実は わりと最近 祖父が亡くなったんですよ。

彼はせっかちでイタズラ好きな人でしたから

娘をせかして『ほら!このお腹だ、飛び込め!』って、

僕のこの大きなお腹に入らせたのかもしれないって思ったりします」

 

「せっかちだから間違えたのか or イタズラねえっ。(笑み)

北山くん けっこう ホモっぽい 

アンニュイな妖しい目をしてるもんなあ」

 

「はあ、」

 

「『つわり』は まったくなかったんだ?」

 

「ボク以外は、はい。」

 

「ははっ」

 

「あっ、あと先生、ウチが4月に女の子、

そして僕の嫁の従妹が6月に女の子、

同じく嫁の弟が8月にこれまた女の子 と出産ラッシュで。 

おめでたって 続くんですねえ」

 

「ああ、そう云えば僕の方も・・・

北山くんはじめ元教え子さんがあと二人。

片方は地方に引っ越しちゃって 男の子生まれましたって

暑中見舞い来てたな。

もう一人は 連絡来るの 待っているところだよ。

ワシなんか最近アンニュイやし、

めんどくせえからまとめてこれから

ようやくお祝いしょうかと思ってる。

続くんだねえ おめでたって。不思議だよねえ」

 

この 『想像妊娠』で「つわり」を体験した北山くん、、、、、

昔声優の学校で、僕は 生徒さんたちに

『自主的に音声のオリジナル作品(一分半以内)持って来いよ、プロになりたいならさあ。コメントするから』

って募集していたんです(今もやっていますが声優志望クラスを抱えていないのでアバンギャルドな作品が減り 残念な僕です)が、

十年以上前 北山くんの制作した作品は それはもう驚愕モノの大爆笑作でした。。。。。。。。。

 

「なあ 北山くんのあの『乳搾り』、

俺のコレクションの中でまだ異彩を放ち続けているよ。

最近色々うるさいから さすがに学校で聴かせたことはないが、

あれは 力作だなあ!」

そう云うと北山くんは あの「迷作」について目を爛々と輝かせながら昨日のことのように熱く語り始めた。

 

作品の長さは 花田の指定で1分30秒以内。

内容は極めてシンプルだ。

 

・・・・・・・・・都会の喧騒を逃れてサラリーマンが、

田舎で旧友が采配する牧場を訪れ 喜びに満ちて牛の乳を搾っている。

モノローグ:(満面の笑みである・・)

「ああ!素晴らしい自然よ!たおやかな乳牛よ!

なんて美しいんだ! よし!僕も乳を搾るぞ!

・・・・あれ?やはり僕が「はじめて」で「ぎこちない」から、

牛も緊張しているのかなあ?硬くなってる。

それでも僕は 一生懸命やさしく絞ってあげた。

おおおおおおお!うおおおおおお!!!!!

ありがとう! 牛よ! こんなに沢山!!!!!

バケツ一杯っ! 乳を出してくれた! なんて素晴らしいんだ。

ありがとおおお!!!!!!!!

あ、牧場主の友人だ!」

 

『おおおおおおおい!こんなにたくさんお乳が取れたよ!!!!!』

 

と叫ぶ彼に 

近づいてきた友人は云う。

 

『そいつぁ~…オスだよ?』・・・・・・END

 

さすが北山くん!この作品の通り 奥方になり代わって 「つわり」を体験したのだ。『「赤ちゃん」さん? そいつあ~…父だよ?』

 

             おしまいっ

◆読まれた方のコメント、メールで戴きました(^^)/m(__)m

①私も妊娠の報告を母にした時に「この間あなたが女の子を抱いている夢を見たから女の子だ」と言われ娘を出産後に「やっぱり女の子だったでしよ」と言われたことを思い出しました。残念ながら主人はつわりの体験はなかったですが(笑)不思議なことってあるんだな~と思いました。:M・Oさん ありがとうございます!花田拝